社会保険(公的介護保険、労災保険、雇用保険)

前回の復習

・例題1 健康保険の保険料は、全額、労働者が負担する。

・解答✖️  解説:健康保険の保険料は、会社と労働者が折半で負担する。

・例題2 公的医療保険に加入している場合、入院時の食事代や差額ベッド代も全額保険でカバーされる。

・解答✖️ 解説:公的医療保険では、入院時の食事代や差額ベッド代(個室などの特別保険料)は自己負担となります。食事代には標準負担額が設定されており、一部自己負担で済みますが、差額ベッド代は基本的に全額自己負担です。

・例題3 厚生年金保険に加入している会社員が老齢厚生年金を受給する場合、受給開始年齢は一律で65歳以上である。

・解答✖️ 解説:老齢厚生年金の受給開始年齢は原則65歳ですが、特別支給の老齢厚生年として、生年月日に応じて60〜64歳の間に一部受給できるケースがあります。

今日の科目

・1公的介護保険

・公的介護保険とは

・公的介護保険の内容

・2労災保険

・労災保険とは

・労災保険の内容

・3雇用保険

・雇用保険とは

・雇用保険の内容

・4まとめ

1 公的介護保険

・公的介護保険とは

公的介護保険は、介護が必要になったときに、費用の一部を公的な制度で賄うための保険制度です。日本では、40歳以上の人が加入を義務付けられている社会保険制度の一つです。

・公的介護保険の内容

特徴

1:対象者(被保険者)

・第1号被保険者(65歳以上):要介護・要支援認定を受ければ、病気の種類を問わず介護サービスを利用できる。

・第2号被保険者(40〜64歳):加齢が原因とされる特定の病気(例:認知症、パーキンソン病など)の場合に介護サービスを利用できる

2:保険料の負担

・40歳以上の人は健康保険料と一緒に介護保険料を支払う。

・65歳以上の人は所得に応じた保険料を市町村に納める。

3:介護サービスの内容

・在宅サービス(訪問介護、デイサービス、福祉用具貸与など)

・施設サービス(特別養護老人ホーム、介護老人保険施設など)

4:利用者の負担

・介護サービスを利用すると、原則1〜3割の自己負担が発生する(所得に応じて変動)。

目的は、高齢化社会に対応し、家族だけでなく社会全体で介護を支える仕組みを作ることです。

2 労災保険

・労災保険とは

労災保険(労働者災害補償保険)とは、仕事中や通勤中に起こった怪我や病気、障害、死亡に対して補償を行う公的な保険制度です。労働者を守るために、政府が運営しており、すべての事業者(会社)が労働者を雇う際に加入が義務付けられています。

・労災保険の内容

特徴

1:労災保険の対象者

・労働者(正社員・アルバイト・パート含む)が対象。

・経営者や個人事業主は基本的に対象外だが、特別加入制度がある。

2:保険料の負担者

・全額を会社(事業主)が負担する(労働者の給与から天引きされることはない)。

3:労働保険で受けられる補償

・療養(補償)給付:仕事中や通勤中の怪我・病気の治療費を全額補償(自己負担なし)

・休業(補償)給付:療養中で働けない場合、給料の約80%(休業4日目以降)が支給される

・障害(補償)給付:後遺障害が残った場合、等級に応じて年金または一時金が支給される

・遺族(補償)給付:仕事中や通勤中の事故で亡くなった場合、遺族に年金または一時金が支給される

・介護(補償)給付:労災で重度の障害を負い、介護が必要になった場合、介護費用を支給

4:労災保険の特徴

・健康保険とは別の制度なので、労災事故の場合は健康保険を使わずに労災保険を利用する

・会社が労災と認めない場合でも、労働基準監督署に申請できる

・パートやアルバイトでも対象になるため、雇用形態に関係なく適用される

この制度により、労働者は仕事中や通勤中のリスクから守られ、安心して働くことができるようになっています。

3 雇用保険

・雇用保険とは

雇用保険は、失業した時や育児・介護で働けない時に、生活を支えるための給付を行う公的な保険制度です。働く人が安心して仕事を続けたり、再就職しやすくなるようにサポートする目的で運営されています。

・雇用保険の内容

1:加入者対象

・基本的に、雇用されている労働者(正社員・契約社員・パート・アルバイトなど)が対象

・ただし、一週間の労働時間が20時間以上かつ31日以上の雇用見込みがある場合に加入

・自営業者やフリーランスは対象外(特例で一部の個人事業主も加入可能)

2:保険料の負担

・労働者と会社(事業主)が保険料を負担(給与から天引き)

・保険料率は業種によって異なる

3:受けられる主な給付金

①基本手当(失業手当)

・失業した時に、次の仕事が見つかるまで一定期間、給料の50〜80%が支給される。

・受給条件:離職前の2年間で、雇用保険に12ヶ月以上加入していること(例外あり)

②育児休業給付

・育児のために仕事を休む場合、最長2年間、賃金の67%(途中から50%)が支給される

・受給条件:一年以上雇用保険に加入していること

③介護休業給付

・家族の介護のために仕事を休む場合、最大93日間、賃金の67%が支給される

④教育訓練給付

・資格取得やスキルアップのための講座を受けると、費用の一部が支給される

・対象となる講座(FP資格、簿記、IT関連など)は国が指定している

⑤高年齢雇用継続給付

・60歳以降、賃金が下がった場合に、最大で賃金の15%が支給される

4:雇用保険の特徴

・失業中の生活を支え、早期再就職を促す制度

・パートやアルバイトでも一定の条件を満たせば加入できる

・求職活動をしないと基本手当(失業手当)はもらえない

この制度によって、仕事を失っても生活が安定し、再就職しやすくなる仕組みが整えられています。

4 まとめ

保険名対象主な目的
介護保険40歳以上の全員介護サービスを受けるため
労災保険すべての労働者仕事中・通勤中の怪我や病気の補償
雇用保険労働者(条件あり)失業・育児時の生活支援

それぞれの制度は目的が違うので、『何のための保険なのか?』を意識するとわかりやすいのかなと思います。